レ・バッティステッレ

ジェルミーノとクリスティーナ・ダル・ボスコ夫妻が経営するレ・バッティステッレ社は、ブロニョリーゴ地区の中心部、ウンベルト・ポルティナーリのロンケット農園のすぐ下に、ひっそりとした佇まいをみせています。この地方は昔から醸造業者が少なく、ポルティナーリと、レンツォ・ロディギエーロのワイナリー「レ・マンドラーレ」だけが例外となっていました。若い二人も、収穫したブドウを協同組合の醸造所に納めていましたが、2002年、独立して事業を立ち上げようと決心しました。クリスティーナの言葉を借りるなら、「自分のワインが作れる自由」を求めたのです。目の前に広がるクリュと同じ名前のレ・バッティステッレ社はこうして誕生しました。このクリュからは、アリオストの叙事詩『狂えるオルランド』の登場人物として出てきそうな「サクリパンテ」という名前のワインも生まれています。風変わりなこの名前は、じつはダル・ボスコ家の祖先の名を借りており、「サクリパンテ・ダル・ボスコ・フ・アンドレア」、つまりアンドレアの息子サクリパンテと記された1721年の取引証書がそれを証しています。証書は額縁に収められ、テイスティングルームのひときわ目をひく場所に飾られています。ダル・ボスコ家は伝統と深く結びついており(ワイナリーにハイテク設備がフル装備されている現在でも、彼らの物語は何十年も前、ブドウをまだ背負い籠で運んでいた時代のワイン造りの世界を想像させてくれます)、ラベルに祖先の名が記されていても驚くにはあたりません。彼らはまた、メディテーション・ワイン「ヴィン・サント・ディ・ブロニョリーゴ」の生産にも力を入れています。このワインは、地元の特産品として長い伝統を誇るものの、今ではわずかな生産者の間で「内輪の楽しみ」用に造られるにすぎなくなっていました。
レ・バッティステッレ社では、3ヘクタールの非常に勾配のきつい斜面に、ペルゴラ・ヴェロネーゼ仕立てでガルガーネガを栽培しています。いわゆるヒロイック(果敢)なブドウ栽培ですが、その分、きわめて高いリスクが伴います。クリスティーナは、ブドウ畑に文字どおりトラクターごと嵌り込んでしまった夫を、たった一人で(「助けてくれる人は誰もそばにいませんでした」)救出しに行ったときのことを思い起こすと、今でも震えが走ると言います。それほど危機一髪の状況だったのです。
玄武岩質の土壌は赤い土に黒い小石が混ざっており、ブドウ畑の境界となる石壁や、畑に登っていく古い石段と同じ火山性です。クリュの中央には、とても小さな天然の泉があり、滾々とあふれる湧き水がせせらぎとなって流れています。
このクリュのワインを初めて瓶詰めにしたのは2006年のことでした。収穫作業は9月の終わり頃に手摘みで行われ、醸造と熟成にはステンレスタンクのみが用いられています。そのためにこのワインには、ガルガーネガがモンテフォルテの最高の土壌で栽培されたときに発揮される、ゆたかなミネラル感や鉱物性の力強い酸度がしっかりと表出されています。

ジェルミーノ&マリア・クリスティーナ・ダル・ボスコ
レ・バッティステッレ